なぜ、この場所を選んだのか。今となっては覚えていないのですが、長距離列車V/Lineでメルボルン中心部から2時間ほどのトラファルガー(Trafalgar 地図)というところへ日帰り旅行をしました。帰国前に行ったレイクス・エントランスの一つ前の旅でした。Googleマップで見ていて気になった駅周辺にあった町の史料館を訪ねたのですが、その日が閉館日だったようです。「今日はお休み」の閉館日ではなく、閉館したその日だったのです。そうおっしゃった受付の方に、私が日本から来て写真の勉強をしていること、日本に帰る前に旅行に来たことを話すと、受付の方が事務所に案内してくれ色々話を聞かせてくれたのはこの土地だったと思います。細かいところは力不足で理解できませんでしたが、資料の整理をしながら、町や人の様子を撮影したダゲレオタイプの写真をデジタルアーカイブしているのだというお話でした。パソコンに取り込まれた編集中の写真を開いて見せてくださったり、もう使わないからと町の人が持ってきてくれた二眼レフのカメラなんかも見せてくださいました。
旅の思い出
事務所の雰囲気を堪能したのち、お礼を言って出発。プランBを立てていなかったので、この後はノープランでした。まっすぐ歩きまっすぐ帰ってくれば道に迷うこともなかろうと、駅からまっすぐ伸びていた道を歩いてみました。住宅地を抜けて放牧地をわき目に道路を歩いていきました。あまりに広い土地で、周りに高い山があるわけでもなかったので、遠近感がわからなくなるような空間が広がっていました。牛や羊の存在に気づくのにもしばらく時間がかかりましたが見渡す限りの牧草地に時折、乾いた木々が硬い葉を茂らせてポツリポツリと並び立っています。そのあたりにある井戸らしき場所に乳牛が列をなして向かい、輪になって給水する様子をしばらく見ていました。ふと後ろを振り返り辺りを見回すと、野生のベリーが当たり前のように実を付けていたり、倒れそうで倒れる気がしない粘り強さを醸している木が生えていたり、見上げたその奥には人が住み始める前から土地を見守ってきたような周囲の木々とは打って変わって瑞々しい印象の巨樹が見えたりと、オーストラリアの草木を存分に堪能させていただいた散策でございました。
牧草をはみながら牛や羊は何を思うのでしょうか。
旅の思い出