目覚ましが鳴る前に起きた。4時前だった。起き上がり、朝の支度をする。思いの外よく眠れたらしく、体がすんなりと動く。掃除を済ませ、食器を棚に戻し、飲み物を淹れる。メールとニュースをチェックしたら、朝の散歩へ出かけよう。
まだ日が登り始めたばかり。空気は心なしかひんやりと湿っていた。夏というよりは秋の始まりに近いような空気だった。カメラをさげ、ゆっくりと踏み出す。スマホを修理に出したので、今朝はGFX50S IIとお散歩だ。
いつものコースというのは特にない。散歩だから、決めなくていい。散歩する時間もまちまちなので、出会う方々もその日によって変わってくる。
階段をのぼり小高い丘に差し掛かる頃、英国紳士風の男性が景色を眺めているのが見えた。朝日が静かに遠くのビル群を照らす。ほんのりとした淡い赤と青のひと時。朝の静かな風景に見入っておられる姿が印象的だった。ふと向きを変え、空を眺め、こちらに向かってゆったりと歩いている。
三叉路に差し掛かった頃、顔が見える距離になったので、会釈をしたのち「おはようございます」と笑顔で挨拶をすると、もの静かな顔で「おはよう」と答えてくださった。60代くらいの紳士だった。挨拶をしてすれ違いざま、Tシャツのプリントが目に入る。小さなキティちゃんが碁盤の目に並んだデザインだった。頭の中で「ハロー・キティ」がこだました。私の後方にいたワンちゃん連れのご夫妻にも「おはよう」とやおら挨拶をなさっている様子を見て、なんだか心がほぐれた朝のひととき。